「貸借対照表」と「損益計算書」の作成は、個人事業主や企業の経営者、経理担当者にとって頭の痛い作業です。
更に資金調達の際にもこの2つの表の数字から会社の経営状態を判断することになるため、内容をよく理解しておく必要があります。
ここでは、それぞれの違いについて説明していきます。
定義
まずは、貸借対照表と損益計算書の定義からです。
なお、個人事業主の方が青色申告での最大55万円の特別控除を受けるには、確定申告の期限内に「貸借対照表」と「損益計算書」の提出が必須となります。
※令和元年以前は最大65万円でしたが、税制改正により令和2年以降は最大55万円へ引き下げられています。
引き続き65万円の控除を受けるには、e-Taxによる申告や電子帳簿保存が必要となります。
参考:国税庁 No.2070 青色申告制度|国税庁 (nta.go.jp)
貸借対照表[B/S]
貸借対照表とは、決算の際に作成される財務諸表のひとつであり、企業のプラスの財産(資産)とマイナスの財産(負債)のバランスをまとめたデータです。
企業の資産と負債を主に表しています。また、貸借対照表は英語ではバランスシートと呼ばれることから(B/S)とも呼ばれます。
貸借対照表は、左側が資産、右側が負債と純資産という構造です。
資産の部は、集めたお金がどのように投資され保有されているかを示しています。
そして、負債・純資産の部は必要なお金をどのように集めたかを示しています。
貸借対照表のポイントは、「左側と右側の金額が常に一致」していることです。
損益計算書[P/L]
損益計算書とは、名前の通り企業の損益を計算したものです。損益計算書で、企業の業績どのような状態なのか、一目でわかります。
損益計算書は収益・費用・利益の3つの要素から成り立っています。収益から費用を差し引くことで最終的な利益を計算します。
プロフィット&ロス・ステイトメント(Profit & Loss statement)略して(P/L)とも呼ばれています。
損益計算書からわかる利益の区分は、
「売上総利益」「営業利益」「経常利益」「税引前当期純利益」「当期純利益」 の5つです。
損益計算書でまず確認するのは、「利益がマイナスになっていないか」です。利益がマイナスになっている場合は「損失」と表現されます。
特に重要なのは、企業の通常業務で得た利益である「経常利益」がマイナスになっていないかどうかです。
最終的な「当期純利益」がプラスであっても、「経常利益」がマイナスであれば、通常の業務が赤字であったことを意味し、
その赤字を補うために固定資産を売却して「特別利益」を得たということになります。
そしてその場合、売却するものがなければ「当期純利益」もマイナスになるリスクがあるので、事業計画や財務計画を見直す必要がある という事になります。
貸借対照表が企業の財務状況を示しているのに対し、損益計算書は企業の業績を示しています。
まとめ
このように「貸借対照表」と「損益計算書」で、会社の経営状態が明らかになります。
収益に対する費用の割合や、預金と借入の状態などは、貸借対照表と損益計算書でよくわかりますし、
過去のデータと比較することにより、その会社の経営状態が浮き彫りになります。
また、「貸借対照表」の「利益」と、「損益計算書」の「利益」は必ず同じになります。この2つの財務諸表は密接な関係にあり、
正しく作成することで財務分析の精度も向上します。