株式上場の審査時には必ず、「反社との関わりがないか」というチェックが厳しく行われます。
そして実はスタートアップに投資をする場合も反社へ警戒をしなければいけません。
投資先の社内や株主に反社がいた場合、さまざまな災難に見舞われることとなります。
また、反社として認定された人物の近しい人も、反社として認定されてしまう恐れがあります。
一度そういった認定を受けてしまうと、上場審査の際に、実際には反社でなくとも「あの社長だから…」という理由で落とされてしまうということも起こり得ます。有名な人の紹介があったり、有名投資家も投資しているからと安心して投資したら、実は反社と関わりのある企業だったというパターンもあります。別の誰か言っている話を判断材料にせず、必ず自分で投資判断を行うことが重要となります。
今回は、自分達で簡単に反社チェックできる方法をご説明します。是非今後のお役に立ててください。
そもそも反社の情報は公にはならない
日本のスタートアップ業界は「知っている人は知っていて、知らない人は全く知らない」という状況です。
情報が回ってくるようなコミュニティや人脈がない限り、「誰が反社だったのか・どこに反社のお金が入っているのか」などの情報はまず回ってきません。
また、スタートアップ業界では、個人の評判や知名度を重視する傾向が強くあります。
投資家たちの中でも、自分が投資した企業が反社と関係があった場合、自分の評判を気にしてその事実を隠したがる方が存在します。
自分の投資の判断が間違っていたという悪いイメージが付くのを恐れて、その企業が反社と関係があるということを話したがらないのです。
そしてそもそも、特定の個人が反社であるということを公にすることは人権問題となってしまうため、公表することができません。
反社に近い人をリスト化してウェブ上で公開するなどの行為はたとえ善意でもNGです。
こういったことが原因で、どこが反社とつながりがあるのか、知らない人が見ても全くわからないのが現状です。
つまり、一度反社であると判明した起業家や企業でも、情報を持っていない人(エンジェル投資家になりたての人など)を騙すのは思っているよりも簡単なのです。
チェック① 自分で情報収集する
その企業を知るのに一番有効なのは、社長や企業についての周囲からの評判をチェックすることです。
反社と関わりがあるかどうか以外にも信用できる人物なのかどうか、ちゃんとした企業なのか…ということを自分で確認できます。
現在は、SNSなどで知り合いを辿っていけばつながることができる人も多くいます。
以前その企業に勤めていた人や、関係者に話を聞きくことも出来ます。特に女性関係や金銭面でのトラブルを起こしたことのある経営者には注意してください。
チェック② 調査会社に依頼する
反社チェックの際には調査会社に調査をお願いすることもあります。
調査会社や探偵というと浮気調査などのイメージも強いですが、特定の個人や企業の反社チェックも行ってくれます。
徹底的に調べてくれるため、データベースでの検索や素人では洗い出せないようなことまでチェックすることができます。
相応の料金はかかるため、ここぞという時に依頼することをお勧めします。
有名な調査会社を2つ掲載しておきます。
帝国データバンク
反社チェックといえば最初に思いつく人も多いのが帝国データバンク。国内最大手の企業専門の信用調査会社で、現地に足を運んで直接確認する「現地現認」をポリシーに掲げています。
株式会社トクチョー
こちらも老舗の調査会社で、徹底的に調査してくれる印象です。
チェック③ 日経テレコン・帝国データバンクを利用する
日経テレコンや帝国データバンクといったデータベースで検索するというのも一つの手です。
日経テレコン
日経テレコンは新聞・雑誌記事の情報をまとめて検索することができるデータベースサービスです。
その会社の関係者が過去に事件を起こしていないか、会社間でのトラブルや怪しいうわさなどは無かったかをチェックすることができます。
実際に老舗のVCでも投資を判断する際は日経テレコンを使って過去の記事をチェックしており、王道の反社チェック方法と言えるでしょう。
TDB企業サーチ
調査会社である帝国データバンクが運用するデータベースサービスで、帝国データバンクの独自調査を元にまとめられた企業情報が掲載されています。企業が自称しているものではなく、実態に基づいた主業種や所在地をチェックすることができます。
チェック④ 警察・暴追センター・特防連などへ照会を行う
警察をはじめ、反社のリストを持っている団体へ問い合わせればその人が反社かどうかチェックすることができます。
チェックしてもらうには基本的に氏名と生年月日が必要です。しかし、これらの照会先は投資や取引前の信用調査というよりは、何か起こった時に対応を相談するための連絡先と考えるべきでしょう。
暴追センターも、基本的に「何か起こったときの対処法を相談する窓口」でありますので、万が一のために覚えておいてください。
チェック⑤ 仕訳日記や通帳をみせてもらう
反社を特に警戒する投資家は、投資前の参考として仕訳日記帳やそれに値する通帳やカードの利用履歴の提出を起業家に求めることがあります。
仕訳日記帳とは、日付順に取引が記載された帳簿のことです。
仕訳日記帳を見れば、詳細なお金のやりとりを見ることができます。
いつ、どの企業とどういったお金のやり取りがあるのかや、従業員の給与までわかってしまいます。
金遣いの粗さや不明なお金の使い方はないか、怪しい取引先や借入元、従業員がいないかという調査に繋げることもできます。
起業家側から嫌がられることもありますが、どこにお金を払っているのか、どこから貰っているのかということをはっきりさせ、怪しい点がないか確認していく事ができます。特に、仮払金が多いような場合や、経費の使い方については注意して確認していきます。
一般的には投資時に仕訳日記帳まで開示をさせることはしないため、経営者からは驚かれることも多いですが、見せてくれる場合は信用できる可能性が高いです。逆に、投資先が仕訳日記帳やそれに類するデータを頑なに見せない場合には要注意かもしれません。
最後に
現在は反社に対する社会的な監視がより一層強まっています。もし自分が反社でなくとも、関わりがあると判断された時点で取り返しがつかないことになってしまいます。銀行の与信調査では、反社関係の企業と税理士事務所が同じというだけで融資を断ることもあるそうです。反社勢力と食事を一緒にしたなどはもちろん、知り合いとして彼らの名前を口にしただけでもアウトです。
知り合いからの紹介であったり、業界の著名人が親しくしている人であっても「ほんとうに信用できるか?」は、自分の頭で考えることが重要となります。