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機密保持契約(NDA)締結が必要な理由

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自社内の限られた人間のみで保持したい機密情報を、事業上どうしても社内や他社の人間に教えざるを得ない…ということがありますよね。

例えば、「自社が開発している新商品の制作を工場へ依頼するにあたって、工場に詳細を提示する」

「システム開発を発注するにあたってベンダーに社外秘情報を提示する」というような場面です。

このような場面で「機密保持契約(NDA)」を締結し、相手に対して機密情報の利用や漏洩を禁止し、

万一破った場合には損害賠償請求を行う旨を規定しておくことが一般的なっています。

しかし、「機密保持契約」、何となく慣例として行っているだけで、実際どのような効果があるのか分かっていない方も多いのではないでしょうか?

「機密保持契約」が何故重要なのか理解していないと、その効果を十分に発揮するために必要な条項を入れ忘れたり、

相手が契約に違反した場合にどう対処して良いのか分からず時間を徒過してしまうといったことになりかねません。

今回は「機密保持契約」はなぜ重要なのか。ポイントを説明していきます。

NDA(秘密保持契約)とは – IT用語辞典 e-Words


ポイント1

原則的に、「契約」は、契約を行った当事者同士をのみ拘束するものです。

自分が相手(Aさん)に機密情報を伝え、Aさんとの間で機密保持契約を締結した場合、

その契約は原則としてAさん以外の人を拘束できません。Aさんが契約を破ってBさんやCさんに機密情報を伝え、

その方々が機密情報を洩らした場合

①Aさんに対して「契約違反」として損害賠償請求を行うことができる(ただし、Aさんが無資力なら何も得られない)

②BさんCさんに対しては、機密情報の使用停止や損害賠償を請求することはできない ということになります。

しかし例外的に、不正競争防止法上「営業秘密」の場合は、BさんやCさんに対しても「機密情報使用禁止」を要求できる場合があります。

※不正競争防止法…営業秘密侵害や現産地偽装、コピー商品の販売などを規制している法律(平成5年法律第47号)


機密保持契約を締結しておけば、万一相手が契約に違反しその情報を他人に教えても、その他人による情報使用などを食い止められる可能性があるのです。
このような効果を認めさせるためにも、機密保持契約においての機密の範囲や開示許容者について、明確に規定しておくことが重要といえます。

例えば、相手企業の開発部門担当者に開示するとして、その担当者が別の部署の人に開示するのはOKなのか(又はどういう場合にOKとするのか)など。契約書上で明確に規定されているかどうか今一度確認してみてください。

 

ポイント2

上記は「自分が教えた機密情報自体」の問題ですが、こちらは、「機密情報を元にした不正な活用」という場面です。

例えば、レストランを経営する自分が画期的なレシピを知り合いに教えたら、その知り合いがそのレシピからインスピレーションを得て別のレシピを考え出し、ライバル店をオープンさせてしまったというような場合です。

こうした不正な活用を防ぐには、機密保持契約で「競業禁止義務」というものを設定するのが一般的です。

「相手方は、自分が教えた機密情報を元に、自分と同一又は類似のビジネスを行ってはならない」といった規定を行います。

 

ポイント3

機密保持契約は、特許との関係としても意味を持っています。

特許の出願をして特許権を得るには、その発明が出願時に「公知」でない(公に知られていない)ことが必要です。

そして、機密保持契約を締結せずに他人に教えてしまうと、「その時点で当該発明は公知になった」と判断されてしまうおそれがあります。

逆に、機密保持契約を締結しておけば、万一相手がその発明について不特定多数の人に漏らしても、特許権を取得できる望みがあります。

従って、将来的に特許出願を行う可能性がある発明について他人に教える場合は、その相手との間で機密保持契約を締結しておく必要があるのです。

特許権との関係においては、機密の範囲がきちんと明示されているかどうかは、特に重要です。

また、上記のようにして「公知」になってしまった場合に特許権を取得するには、6ヶ月以内の出願が必要です。万一「公知」になってしまった場合には、速やかな出願を行ってください。


以上が、機密保持契約を締結する必要性と理由です。どうして重要なのか、また、どこまで開示するかなど明確に決めておくことで十分な効果を発揮することが出来ます。